「姓は諸葛、名は亮、字は孔明です」
と名乗られて、どういうことかよくわからなくて、古代中国の名前について大まかに調べたよ。
名前は主に 7 種類
姓、氏、名、字、幼名、諡号、廟号の 7 種類があるよ。
例えば曹操は、姓(氏)は曹、名(諱)は操、字は孟徳。幼名は吉利または阿瞞。廟号は太祖、諡号は武皇帝または武帝。
『三国志』を楽しむためにはこのうちの、姓、名、字の 3 種類を知っておこう。
姓(せい)
国の首長が称したのが「姓」だよ。同じ出身地、同じ祖先を示しているよ。
古代では同姓同士の婚姻はよくないことだったみたい。『論語』「述而」で「魯の昭公は、同じ姫姓の女性を呉国から妃として迎えたけど、礼を知ってるの?」と、君子の行いではないと言われているよ。
氏(し)
家族や血縁を示す名前だよ。誰がどの家に所属しているのかを示しているよ。先祖から引き継がれることが一般的だよ。現代の日本で言う名字みたいなものだね。
都市に出自を別にする人々が集まったから、出自ごとに氏を称したよ。
地名、官職、職業などいろいろな由来があるみたいだよ。
戦国~秦時代以降、氏は姓と同一化していったよ。「姓は ○○」と名乗るようになったんだ。
複姓
2 文字以上の姓だよ。珍しいらしいよ。諸葛亮の諸葛、夏侯惇の夏侯、司馬懿の司馬、皇甫嵩の皇甫、公孫瓚の公孫など。官職由来のものが多いのかな?
「拓跋」「慕容」みたいな部族名が姓になる例もあるよ。
名、諱(いみな)
名は、個人の本名だよ。親が生まれたときに子に付ける名前だよ。死後に使われる名は諱というよ。
通常、直接に個人の名を使うことは避けるよ。これは、「名を呼ぶことは、その人の存在を冒すこと」っていう考えがあるんだって。だから、親や目上の人を名や諱では呼ばないよ。親や主君は名で呼んでもいいけど、基本的に呼ぶことを避けるんだ。代わりに字を使うことが一般的だったよ。
主に使われるのは公的な場や書面の上だね。
避諱(ひき)
特に帝などの偉い人の諱を口に出したり書面に書いたりすることを避ける考えで、諱を同じような意味を持った別の文字または語句に置き換えることだよ。
親の名を子につけるのも避けるよ。
例えば、劉邦の「邦」を「域」や「国」に置き換えたり。もしも呂布が皇帝になったら、「布」が別の文字に置き換えられていたのかも?
字(あざな)
成人後に友人や知人から呼ばれるときの名前だよ。他人から呼ばれてもいい名前だよ。読み方は「あざな」。
その人の性格や希望、家族の期待に基づいて選ばれたみたい。それに、良い意味を持つ文字が好まれたんだって。例えば、「忠」「孝」「仁」などがよく使われている印象だね。『三国志』の時代だと「子」が付く字が多いかも?
字のパターンはいくつかあるよ。
名と同じ意味
諸葛亮は、名は亮、字は孔明。『説文解字』によると、「亮」と「明」はどちらも「あかるい」という意味だよ。「孔」は「通」つまり「道が通じる」、または副詞として「とても」という意味だよ。孔明は「めっちゃ明るい」。パリピみたいな明るい性格って意味ではないよね?
諱と反対の意味
呂蒙は、名は蒙、字は子明。「蒙」は「暗い」で、「明」は「あかるい」だから反対の意味だね。
伯仲叔季
兄弟の序列を表す文字があるよ。字にこれらが付いていれば兄弟の順番がわかるんだ。日本で言えば、一郎、二郎、三郎、四郎みたいな感じ。
序列 | 字 |
---|---|
長男 | 伯、孟 |
次男 | 仲 |
三男 | 叔 |
四男 | 季 |
長男は、孫策の伯符、陸遜の伯言、姜維の伯約、曹操の孟徳、馬超の孟起など。
次男は、孫権の仲謀、司馬懿の仲達、董卓の仲穎など。
五男以上いる場合、末子には「幼」が使われることが多いみたいだよ。司馬八達の末子の司馬敏が幼達、馬氏五常の末子の馬謖が幼常など。
親やその兄弟が使った文字は避けるよ。避諱と同じ考えだね。だから、この序列を表す文字が入った字を持つ人物、もしくは兄弟に該当する人がいる場合は、子供の字には同じ文字は使われていないよ。
例えば、曹操(字は孟徳)の息子の字には「孟」や「仲」は使われていなくて、「子」から始まるよ。曹昂は子脩、曹丕は子桓、曹彰は子文、曹植は子建。孫権の息子や、司馬懿の息子の字も「子」から始まるよ。
幼名
「小名」ともいうよ。子供が生まれてから成人するまでの間に使われる名前だよ。
親しい名前、おめでたい意味を持つ名前、あえて悪い名前などを付けるよ。あえて悪い名前は、悪いもの(妖怪など)に目を付けられないためだといわれているんだって。
諡(し、おくりな)
君主、貴族、功臣などに死後に贈られる称号だよ。諡+地位(封号や爵号)で諡号だよ。
諡は「ほめる」という意味があって、その人の生前の性格や功績をほめるものだよ。その人物の功績や名誉を後の世に伝えて、その家族や子孫に対しても尊重を示すために使ったよ。例えば、「景」「宣」「武」「文」など。これに地位を加えて「武王」「文帝」などの諡号で呼ばれるよ。
「武」や「文」はたくさんの王朝で存在するから王朝の名と一緒に書くよ。例えば、曹操の諡号は「武皇帝」だから「武帝」や「魏武(魏の武帝)」と呼ばれるよ。ちなみに発掘された墓に「魏武王」とあったから曹操の墓だとわかったとか(魏王だと他にも該当者がいるので)。
歴史の中で、諡号は個々の人物に対して何回も贈られることもあったよ。関羽や諸葛亮は、後代の為政者によって何回も諡号を贈られているよ。『三国志演義』の書かれた明の時代には、関羽は「協天護国忠義関聖大帝」って諡号になっていたり。明の皇帝は関羽がお好き。
廟号(びょうごう)
主に皇帝や王に使われて、死後に祖先を祀る廟で使われる称号だよ。歴代の皇帝や王に対して贈られて、その人物の性格や功績を反映するものだよ。
廟号にはその人物の治世や業績を表す意味深い名前が付けられたよ。通常は一文字の形容詞と「祖」や「宗」の文字で構成されるよ。
「祖」は王朝の創始者やとても重要な功績を持つ人物に使われるよ。「宗」は後継者やそれに準じる人物に使われるよ。
例えば、曹操は「太祖」。「高祖」は漢の劉邦、「世宗」は漢の武帝(劉徹)など。
相手への呼び方
関係性や社会的地位に応じて、名前の呼び方がさまざまに変化するよ!
名での呼び方
親や目上の人が子や目下の人に呼びかける場合や、自称の場合は名で呼ぶよ。姓+名は、公式の場やフォーマルな場合に使うよ。
🙆♂️ 劉備の母が劉備に対して「劉備」と呼ぶのは OK
🙆♂️ 劉備が自分を「劉備」と呼ぶのは OK
🙅♂️ 関羽や張飛などの部下が主君である劉備を「劉備」と呼ぶのは NG
字での呼び方
同僚や友人の間柄だとこの呼び方だね。姓+字、または字だけで呼ぶよ。例えば諸葛亮の場合は、「諸葛孔明」や「孔明」になるよ。
字は成長したその人物にあった呼び名になるよ。字で呼ぶと親しみが生まれると思うの。
史書にも、親しさを示すために字で呼ぶ場面があるよ。
官職名での呼び方
相手が官職に就いている場合、その官職名で呼ぶことが一般的だよ。姓+官職名、または官職名だけで呼ぶよ。例えば、豫州牧の劉備は「劉豫州」と呼ばれるよ(『三国志』「蜀書先主伝」参照)。
そのほかの呼び方
敬称を付けることで、相手に対する敬意を示すよ。「陛下」「殿下」などの呼び方は現代でも一般的だね。
他には、姓+敬称の呼び方があるよ。「○ 夫子」「○ 先生」のように。例えば、孔子は「孔夫子」と呼ばれていたよ。
史書での書き方
史書で姓+名+字の形式で書かれている場合は、省略されていると解釈できるよ。「徐庶元直」→「徐庶(字)元直」みたいに(『三国志』「蜀書諸葛亮伝」参照)。
どう呼べばいいの?
現代に生きる私たちは、好きなように呼んでいいと思うよ。
基本的には、次のどれかで呼べば問題ないよ。
- 姓+名 例:諸葛亮、曹操、劉備、孫権
- 姓+字 例:諸葛孔明、曹孟徳、劉玄徳、孫仲謀
- 字だけ 例:孔明、孟徳、玄徳、仲謀
「諸葛亮孔明」みたいな姓+名+字は、厳密には誤りだね。でも、創作やメディアだと仕方ないかも。『三国志』は登場人物がたくさんいる上に、呼び方がいくつもあるとわかりにくいからね。
あまり細かいことは気にしないで、まずは人物の名前を覚えることから始めることが大切だね。人物の姓、名、字を覚えると、『三国志』をより楽しめるね!